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『いわき時空散走フェスティバル2025秋』川前・桶売ツアー

▶ 川前・桶売ツアー『いわき時空散走フェスティバル2025秋』

【日時】2025年10月13日(月・祝)13時~16時

【集合・解散】川前小さな拠点おおか

【サポーター】寺澤亜彩加(てらざわ・あさか)

▶ツアーコース

(スタート)川前小さな拠点おおか→ 東松院→ 大出商店→ 星神社→ 種まきの桜→ 矢内半蔵翁碑→ 雨降り松→ 安楽寺→ 川前小さな拠点おおか(ゴール)

 

新エリアの川前・桶売ツアー!マップでは川前駅スタートで作られていますが、駅から集落までがとても長い上り坂が続くので、『おおか』をスタート・ゴールにして桶売集落のみでツアーを実施しました。サイクリストの方や体力に自信のある方は、ぜひ川前駅からチャレンジしてみてください!

ついに、いわき市内の磐越東線では最後の駅までやってきました。いわき市に住んでいる方でも、川前に来たことがない方は多いのではないでしょうか?桶売集落だけでも、面白いスポットが沢山あり、短いコースでしたが満足度の高いツアーになりました!また、川前でクラフトビールをつくっている『SANDi BREWERY』の三戸さんが、リサーチでもご協力いただいたのですが、ツアーにも参加してくれました!三戸さんからも様々なお話が聞けて、盛り上がりました。

運営陣は、早めに来て準備をしつつ、おおかでランチをいただきました。土日は営業はたまにしかしていないのですが、今回は特別に開けてくださり、美味しいごはんを準備してくださいました。参加者の方たちも集まりだし、ツアーが始まる前にランチを食べて、お喋りしながらまったりタイムを過ごしました。

早速ツアーが始まり自己紹介を終えたあとは、『おおか』の運営に携わっている藤舘さんから、お話をお聞きしました。おおかは、川前地域を構成する三つの地区、「おじろい(小白井」「おけうり(桶売)」「かわまえ(川前)」の頭文字を取り、川前での暮らしを「謳歌」してほしいという思いが込められています。月に8~9回ほど開けており、健康事業、茶話会、ランチ営業などを行っています。また、この日はたまたま理事長さんも来られていて、ご挨拶することができました。

おおかの建物は、古民家をリノベーションしてあるのですが、築70年以上になるそうで元々は葉タバコを作っていた場所だそうです。天井を見上げると、竿のようなものが掛かっており、ここに煙草の葉を干して乾燥させていたとのことでした。

また、川前はインゲン豆が有名とのこと。筋がないと言われるほど柔らかく、別格の扱いだそうです。今も栽培している方はいるのですが、出荷はしていないとのことでした。おおかのランチでは、タイミングが合えばそのインゲン豆が食べれるそうですよ!すると、キッチンから地域の方が「このピーマンも帰りに好きなだけ持ってって!」と言って大きなピーマンを沢山持ってきてくれました。いつランチを食べに来ても、野菜がとっても美味しいので、ぜひ皆さん一度行ってみてください!

さて、自転車に乗って出発!桶売を巡っていきますよ~。最初に向かうのは、『東松院』です。東松院の本堂裏側には、約30本のモミの巨木群があり、平成3年(1991)にいわき市指定天然記念物になりました。中でも「夫婦樅(めおともみ)」が有名で推定樹齢600年、雄モミは樹高37m、胸高幹回り5.34m、雌モミは樹高26m、胸高幹回りは2.67mもあって根本で繋がっています。

また、安藤信正が訪れたという話もあるそうで、戊辰戦争で磐城平城が落城し、敗北した安藤信正は東松院に到着しました。信正は逃亡先を会津か仙台かで悩みましたが重臣会議をして仙台行きを選択します。東松院を出発すると豪雨に遭い、桶売のブナの木の下で雨宿りをして「志ばしとて雨宿りせむかひぞなくこころもぬるる 山毛欅(ぶな)の下かげ」の歌を詠んだといいます。

次のスポットへ向かう途中で、『大出商店』に立ち寄りました。川前にはコンビニやスーパーがないのですが、小さい商店がまだ残っているそうです。カップラーメン、お菓子、飲み物、お酒、日用品などが置いてあります。参加者は、お菓子屋や飲み物を買っていました。三戸さんによると、古いレアなお酒などが置いてたりするそうで、他の商店で、自分の生まれ年に作られたお酒を見つけて買ったそうです!

少し休憩したあと、『星神社』に到着しました。道路から少し歩いて丘の上の方に鳥居が見えます。かつては妙見さまでしたが、明治15年(1882)、星神社に改称しました。妙見さまとは、北極星または北斗七星を神格化した仏教の一つだそうで、その名残で、名前が星神社になっているのではないかと思われます。

また、いわき各地の妙見信仰の氏子地域では正月にアカアカ餅を食べる風習が伝わっているそうです。平家の落武者が下総(千葉・茨城)の相馬に流れ着き、その後、奥州の相馬に渡りましたが(その途上、いわきに落ち着いた者もいたとか)食糧難で正月なのに小豆を混ぜた赤餅を食べるしかなかったのが由来といいます。川前に住んでいる三戸さんも聞いたことがないとのことでしたが、「小豆ビールなら作れそう!」と盛り上がりました。

そしてすぐ先にあるのが、『種まきの桜』です。今の時期は、桜が咲いていないので分かりずらいですが、立派な桜の木が見えました。実は、この桜にも伝説があるそうです。源義経が、奥州平泉で恋人たまきと平和に暮らしていました。しかし平家打倒のために義経は京に向かい、泣く泣く別れますが、たまきは義経のことが忘れられず後を追います。しかし川前の五林の山に差し掛かった時に病で倒れて亡くなりました。村人はたまきの死を哀しみ、供養として観音像と桜の木を植えました。毎年、春に花開しますが、その時期に種まきをするので、たまきの桜が訛って「種まきの桜」になったといいます。真偽は分かりませんが、「そんな切ない恋物語が!」とビックリでした。

またおおかの方へ戻り、少し行くと『矢内半蔵碑』があります。矢内半蔵(1876~1954)は川前村の村長、郵便局長、たばこ耕作組合長などを務め、とくに産馬組合長として多大な功績を残しました。川前は高地で涼しく、阿武隈山系の花崗岩地質は馬の放牧に最適で宝暦年間には700頭ほど馬の飼育が行わたといいます。旧JAの建物が残るこの場所は、大正時代には馬のセリ市場だったそうです。

また、その後は、葉タバコの工場としても使われていた歴史があるんだとか。おおかでも葉タバコを作っていたという話だったので、桶売では葉タバコの生産が盛んだった時代があるんですね。その時には、タバコの葉がデザインされた最中も販売されて、川前地区のお土産になっていたそうです。参加者の皆さんも驚いている様子でした。

そしてまた走っていくと、田んぼ道の途中に、松と大きな丸い石碑が現れます。石には『雨降り松』と書かれています。その昔、水不足になると雨降り松に雨乞い祈願をしました。残念ながら明治初期に野火で老樹が枯れ、現在のものは後に村人たちが植えたものだそうです。また、鍋田晶山(1778~1858。磐城平藩中老)著の『岩城名勝略記』では、その昔、法陵大権現(熊倉神社の神さま)が乗った白牛が松近くの池で足を洗うと石となりました。「人もしこの石に触るれば百日雨降り、百日干す」といい、牛石にイタズラをすると大雨や日照りが起こるといわれています。この辺りは法陵大権現(熊倉神社)のご神饌田(宮田)で聖地として崇められていました。

そして面白いのが、その横に建てられている桶売の地名の起源について書かれた看板です。そこには、こう書かれています。

光仁天皇の宝亀十一年(780年)藤原継縄卿を征東大使として陸奥に遣わされしとき桶ノ臣という従卒あり。その恋人瓜姫は、はるばる京都から後を追ってこの地(桶売)まで尋ね来る。ときに、桶ノ臣らすでに北国遠く進み行きしを聞きて、かよわき女子の後を追う気力も絶えてここに死す。よって桶ノ臣の桶と、瓜姫の瓜とを結び合せ以後この地を桶瓜(売)と称したという。

「あれ。どこかで聞いた話と似ているな?」と思いましたか?『種まきの桜』の義経とたまきの伝説と話がそっくりですよね(笑)ツアーでも、「似てる!」と盛り上がりました。なぜか、結ばれない切ない恋物語が桶売には多いんですね・・・

最後に、『安楽寺』へ。顕彰山弘願院とし、淨土宗(名越派)の寺院です。2019年度にはいわき芸術文化交流館アリオスが主催する演劇事業「劇団ごきげんよう」が取材して演劇作品「わたしの人生の物語、つづく。川前編」が作られました。時空散走サポーターの松本恵美子さんや大森由美子さんも作品に関わっており、当時、安楽寺へお話を聞きにきたとのことでした。

この日訪問すると、ご住職が本堂を開けてくれてお話をしてくださりました。皆さんは、正しいお寺の参拝方法をご存じですか?私は、自信もって知っているとは言えないくらいの知識でした。宗派によって違う部分もあるようですが、「せっかくの機会ですから、ここは浄土宗なんですが、正しいお焼香の作法を教えますね。」とご住職が言ってくれて、丁寧に教えていただき、その後、一人ずつお参りをしました。とても学び多き時間になりました。お忙しい中、ありがとうございました。

その後、再びおおかまで戻り、無事ゴール!なんと驚くのが、2時間半かけて走行距離5㎞。つまり時速2kmのツアーになりました(笑)「歩くより遅いじゃん!」と参加者の皆さんにツッコまれましたが、自転車に乗っている時間より止まって喋っている時間の方が長いのが時空散走のツアーですのでお許しください!でも改めて時速換算すると衝撃でしたね。

今までで1番コンパクトなツアーだったかもしれません。小さな集落の歴史や物語がぎゅっと詰まった楽しいツアーでした!おおかの皆さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

 

文章:井上栞里

写真:鈴木穣蔵

 

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